主な活動
豊洲新市場への移転を前提とした補正予算案への反対討論
9月5日の本会議でとや英津子議員(練馬区選出)が、豊洲新市場への移転を前提とした補正予算案への反対討論をおこないました。
★討論の原稿です。
2017年第2回臨時会 討論
9月5日 とや英津子(日本共産党・練馬区選出)
日本共産党都議団を代表して、第131号議案「平成29年度中央卸売市場会計補正予算」に反対の立場から討論を行います。
今臨時会に上程された補正予算案は、豊洲新市場の土壌も地下水も環境基準以下にして開場するという約束を撤回して、新市場への早期移転を進めるための予算です。
この約束は、都議会の付帯決議であるだけでなく、東京都自身の方針として、都民と市場業者、消費者に対し、豊洲移転の前提条件として約束してきたものです。ところが知事は、この約束が果たされていないことを認めながら、現実的な新たな方針を進めるとして、大事な約束を反故にしてしまいました。許されることではありません。
一方で知事は、わが党の質問に、生鮮食料品を扱う場である卸売市場において、食の安全・安心の確保が最優先されるべきであるとの考えは変わっていないと答弁されました。しかし、豊洲新市場は土壌も地下水も環境基準以下にするという約束を守ることなしに、食の安全・安心は確保できるのかとのわが党の質問に対し、知事はまともに答えることができませんでした。相矛盾した知事の答弁には、都民の理解も納得も得られません。
知事が、現実的な新たな方針だとして補正予算案に盛り込んだ追加対策の柱は、地下水管理システムの機能強化と、盛り土に代わる地下空間対策です。いずれも、多くの問題点が浮き彫りになり、安心・安全を保障できないことが明らかになりました。
地下水管理システムは、有害物質を含む地下水で盛り土が汚染されないよう、ポンプで地下水を常時汲み上げるという、土壌汚染対策の柱の一つです。ところが、わが党が指摘してきたように、この地下水管理システムはまともに機能せず、盛り土は、ベンゼンなどの汚染が広範囲に検出された地下水に浸かっている状態です。都は追加対策で機能強化すると言いますが、質疑を通じて、本格稼働してから10カ月経っても地下水の水位が下がらない原因も解明できていないことが、明らかになりました。追加対策により、目標水位を達成できる見通しについても、都は明言できませんでした。いつまでも目標達成できない見通しのない対策と言わなければなりません。
地下空間対策は、コンクリートを地下空間の床に新たに敷き、換気で有害物質の濃度を下げる対策ですが、日本建築学会の指針通りコンクリートを打設しても100%ひび割れが抑制できないこと、揮発性ガスの地下ピット内への侵入も少なくするだけであり、完全に侵入を防げるものではないことがはっきりしました。都は科学的な対策だと言い張っていますが、実証実験もされていないのです。
知事は追加対策について、専門家会議の提言をふまえた、専門的・科学的な対策だと繰り返すばかりでした。しかし専門家会議は、石原元知事が設置したもので、豊洲新市場用地で2008年に環境基準の4万3千倍ものベンゼンなどが検出されたとき、「対策は十分可能」との提言を出すなど、豊洲市場移転推進にお墨付きを与える役割をいっかんして果たしつづけてきたのです。そして、専門家会議の提言にもとづき860億円もかけて行った土壌汚染対策は失敗におわり、汚染が除去できなかったことはすでに明白です。その専門家会議の提言だから大丈夫だと言われても、とうてい信用できません。
しかもメンバーは、わずか3人です。この分野の多くの専門家から都の追加対策に対して厳しい批判の声が上がっています。ところが知事は、こうした多くの科学者、専門家の批判に耳を傾ける姿勢を示しませんでした。このまま追加対策を進めるなら、豊洲新市場をめぐり、いままで何度も繰り返してきた失敗を、また繰り返す結果になることを、きびしく指摘しておくものです。
加えて今回、豊洲新市場の店舗内でカビが大量に発生するという、重大な問題が起こり、わが党は、原因の究明と調査を求めました。しかし都は、衛生上問題があることを認めざるを得なかったにもかかわらず、調査の必要はないという答弁を繰り返しました。中央卸売市場の命である食の安全・安心が脅かされる極めて深刻な問題を、あまりにも軽視していると言わざるをえません。専門家からは、地下水位が高く、そのすぐ上に建物が建っているため湿度が上がりやすいのではないか、などの問題も指摘されています。再発防止のためには、原因の解明が必要です。掃除をしてカビを拭き取って終わりというわけにはいきません。カビ大量発生の原因究明と調査を、改めてきびしく求めるものです。
築地市場は、80年以上の歴史を持つ世界に誇るべき市場です。知事はそうした築地市場の価値を認め、基本方針発表の際には「築地を守る」「市場としての機能を確保する」と明言しました。
しかし、実際はどうでしょうか。開会日の知事発言では「築地は守る」との立場は表明されませんでした。市場機能の大幅後退への懸念についての質問でも検討会議を設置して検討するということのみで、あいまいな答弁を繰り返しました。はっきりしたのはオリンピックの輸送拠点・駐車場にするために築地を更地にする、その後民間主導で再開発するということです。
仲卸の目利きを活かしたセリ・市場内取引を確保・発展させることと、中央卸売市場の豊洲移転は両立し得ません。ましてや民間主導の再開発でどのように築地の市場機能を守るのか、具体性に欠ける知事の提案に、市場業者の不安は広がっています。
同時に、オリンピック・パラリンピックは都民生活との調和を前提にして進めるのが本来のあり方です。オリンピック・パラリンピックのために築地市場を壊して更地にすることなど許されません。環状2号線の完成をオリンピックに間に合わせるために移転を急がせるようなことも、あってはならないことです。
築地ブランドや築地市場の建物も多くの方々から「価値ある歴史建造物を守ってほしい」と声が上がっています。営業しながらの再整備も可能だという建築家の方々から出されているのですから、そうした人たちの意見をよく聞いて、築地市場の現在地再整備に踏み出すべきです。
知事の基本方針に対し、多くの市場業者から怒りの声があがっています。質疑を通し、市場業者の「合意」がとれていないことがはっきりしました。市場を開設するのは東京都ですが、運営するのは市場業者であり、合意は不可欠です。知事は、市場業者の合意が豊洲新市場移転の前提だとの立場を表明せず、「理解を求めていく」「ていねいに説明する」というだけでした。市場業者の合意なしに「基本方針」による豊洲移転を進めることは許されません。
以上述べてきた理由により、補正予算案には反対であり、豊洲新市場への移転は中止すべきです。
今回の臨時会は知事が招集した39年ぶりの異例のものであり、しかも、都政の重大問題である市場移転問題が、知事の政策判断で提出した補正予算案を審議する議会でした。当然知事と関係局長の出席のもとで、徹底した審議が求められていました。
わが党は予算特別委員会の設置をはじめ、知事と一問一答による審議、すべての関係局長の委員会への出席、参考人の招致など、都民の負託にこたえる徹底した審議を提案しましたが、実現しませんでした。行政のチェック機能である議会の役割をどう果たすのか各党・各会派に厳しく問われていることを申し上げて、討論を終わります。
以上